《1981年5月14日(木)》
横に前に、ダンプトラックが挟み込むようにして、そっとかかえられて、そのクルマは走っていく。
緑に飢えていた気持ち跳躍させて、クルマを駆って貰った。
もちろん、ボクは免許はない。ハンドルを小さく握る隣の人が運転者。命を預けられた形でそのドライバーは悠々と走行させる。
昨日、久しぶりに、マル一日休んで、のんびりしてきた。僅かの興奮を持ち寄って眼を覚ましたせいか、いやに眩しい若葉の中で何度も瞼をこすりあげた。
陽が南天を過ぎた頃から、微かな睡魔に襲われ欠伸を秘かに繰り返した。運転者は楚々とした仕種で正面を見つめクルマは走る。
こんな安らぎを、ボクは欲していたのではなかろうか。何故なら昨年初夏に見た青葉の翳りは、こんなにも、おだやかで、優しくはなく、刺すような鋭い緑であったのを記憶している。
そして、忘れかけていた生命の息吹を幼く想い出した。それは普段、周囲の目になり、丁寧に見つづけていた世界の自転がボクにも訪れてきそうな胸騒ぎであった。
突然、疾風の如く門戸を叩き続けた、電話のベルに、そして果敢な一声に、ボクは感謝するほかはない。一瞬、ボクは自分の性を疑ったほどだ。決して順路を形式化するような力関係に頼っては、いないが、ボクはその力をおろそかにし、慢心していたのではなかろうか。
恥じた。いまはもう、ありがとうしか言えない。

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